ことさら周期性を持たせずとも、ボチボチ書いていればそれなりに
溜まっていくだろうと思っていた『美術史ナナメ読み』。
が、気がつけば、前回書いたのは何と12月16日だった。
年末年始に浮かれていた時間が、スッポリ抜け落ちた感じである。
ただし、取り上げようとしているのが「ロシア・アヴァンギャルド
という重めの題材であってみれば、それも理にかなっていたのかも
知れない。
おせちと革命では、何ともチグハグである。
そういう意味では、今日は朝から肌寒い雨。
どんよりと薄暗く、革命の起こりそうな日ではあった。
さて、本題。
ロシア革命が民衆の政治的開放を望んだように、ロシア・アヴァン
ギャルドが目指したのは芸術の開放だった。
労働者の仕事が貴族の手遊びと違うように、労働者の芸術は貴族の
美学とは違うべきである、と。
大変立派な理念だった。
華美な装飾や権力的な肖像画ではなく、機能的で工業的な幾何学
図形を使った美学を、彼らは構築しようとした。
そして、多くの魅力的な作品が生まれ、実際的な役割も果たした。
赤い楔で白を撃て』などは、今見てもワクワクする。
しかし、革命の成功は、彼らの勝利には結びつかなかった。
新しい組織ができれば、そこにはまた新たな権力が萌芽する。
スターリンが望んだのは自分の肖像画だった。
また、民衆にしても、専門家たちが展開する最先端の芸術はあまり
にも難解だった。
そうして、ロシア・アヴァンギャルドの芸術家たちは孤立し、
その作品群もペレストロイカまで封印されることになる。
ロシア・アヴァンギャルドは、もっとも意識的に社会や政治に
コミットした芸術活動だったが、その思いは宙をさまよった。
もっとも先頭を走る者が感じる恐さは、目指すべき場所が違って
いることだけではない。
彼は、うしろに誰もついてきていないことにも怯えを感じる。
故に、前衛は勇ましさと同時に悲哀をまとうのである。