上を向いて歩こう

交差点で信号が変わるのを待っている間、知らず知らず目の前の
ビルを見上げていた。
特に何かがあったわけではなく、考えごとをしていたので、
視線が勝手にビルの高さを追った感じだった。
で、「あらためて、こんな風に何かを見上げたことはないなぁ」
と思った。
屋外では、おおむねうつむきがちで、見上げる動作は少ない。
ただ、それはあんまりいいことではないのかも。
極端な上目づかいというのも何だか媚びが入って嫌なものだが、
誰かを見下す視線に比べればずっとましである。
が、下を見ながら歩くっていうのは、意識が伴わなくても、
形的には見下す視線になっていることになるから。
一方、上と言わないまでも、少し遠くを見ながら歩けば、
自ずと姿勢は凛とする。
畢竟、それは自分自身の在り方に対する視線なのかも知れない。
天を仰ぐのは、上に対する引き(というか謙虚さ)があるから。
かたや視線を落としてしまうのは、下を抑える力みがあるから。
ではないだろうか? と。
ならば、できるだけ上を向いて歩きたい。
それはまるで、形から入る踊りの稽古のようである。
天仰流ってな感じかな。
まぁ、ちょっと大げさ過ぎるわな。