渡りに船の話

日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』読了。
おもしろい本だった。
CIAが、日本テレビを通じて反共産主義プロパガンダ
親米主義の扇動を行ったことは容易に想像がつく。
が、問題はそれほど単純でもなかった。
日本側にも、アメリカから資金援助を受けることで早急に
電波網を整備したいという思惑があったから。
つまり、アメリカの一方的な主導で動いた話ではなく、
「借りたい」国と「貸したい」国があったわけである。
加えて、国内電波網の布設には、NHK電電公社といった
組織との競争や駆け引きもあり、つまりは官対民の問題も
絡んでいた。
いわゆる陰謀論よりも、ずっと現実的な内容の本だった。
それにしても、誰かの思惑に扇動されているというのは、
やはり気持ちの良いものではない。
小泉や竹中の破廉恥なまでの親米傾倒は分かりやすいが、
やっかいなのは、たとえばイチローやディズニーランド
などである。
そういうものが牽引するシンパシーは問題化させにくい。
しかし、日本テレビ創始者正力松太郎が「プロ野球
の父」「テレビの父」「原子力の父」と呼ばれることは
偶然ではない。
それらは三つともアメリカが日本に売りつけようとして、
実際に買ってきたものである。
われわれは、自分たちが思っているよりも、はるかに
CIAのシナリオに結びついている。