ネオダダイスムは、1950年代後半から60年代にかけてアメリカで
起こった美術ムーブメントである。
ジャスパー・ジョーンズロバート・ラウシェンバーグが代表的な
アーティストであり、美術評論家ハロルド・ローゼンバーグが
名付け親だった。
ダダイスムとの間には、共通点もあり、相違点もある。
伝統的な美意識に反抗した点で両者は似ていたが、ダダイスム
ネオダダイスムよりもはるかに素朴だった。
それは、「反抗のための反抗」という性質を持ち、若さと純粋さに
あふれていた。
一方、ネオダダイスムは、パックス・アメリカーナの新しい商品
という政治的・経済的役割をすぐに担うことになった。
ジョーンズやラウシェンバーグの作品は、大量生産される既製品を
ティーフや材料にしながら、そこに材料の何百倍・何千倍もの
価値を発生させていった。
作家自身の若さとは裏腹に、市場の側は、反抗的なセンセーショナ
リズムを価値の創出に利用する老獪さを身につけていたのである。
ジョーンズの初期作品は本当に素晴らしく、それらが人々を魅了
したことは、まぎれもない事実である。
が、それをきっかけに、アメリカの現代美術市場が肥大していった
ことには、いささか眉に唾をつけたい。
アメリカの覇権が崩壊しようとしている今日から見ると、金融商品
との類似という連想を免れ得ないのである。
美術の世界では、「工業社会という『自然』が生み出す廃品の中に
美を見い出す」といった理屈がこねられ、ジャンクアートなどと
いうジャンルが成立したりする。
しかし、ジャンク債を商品に仕立て上げた、まやかしの錬金術こそ
今回の大不況の引き金ではなかったか?
作品の善し悪しに対する判断や好き嫌いまでを変える必要はないが、
それらがまとった社会的意味を再考してみる時期に来ているのかも
知れない。