知られざる連帯

『陰謀と幻想の大アジア』読了。
おもしろい本だった。
取り上げてある諸々の陰謀についても興味深かったが、それらの
計画を求めた(求めざるを得なかった)心情を汲み取ろうとする
海野氏の知的姿勢が心地よい。
アジア絡みの陰謀説の多くは、大日本帝国が大陸に進出していく
ための正当化の結果である。
騎馬民族説しかり、日本・ユダヤ同祖論しかり。
大東亜共栄圏という幻想も、そうした延長線上にあらわれた。
日本がユーラシア大陸に入っていくためには、もっともらしい
理屈が必要だったわけである。
戦争を起こし、人を殺した事実はあまりに重いが、そうした正当
化を求める感性自体はデリケートなものだったと思う。
少なくとも、自らの欲望だけを主張した、ヨーロッパ的植民地
主義やアメリカの開拓に比べれば、ぐっと知的である。
個人的に最もおもしろいと感じたのは、ハンガリーとの連帯を
求めたツラン運動だった。
いや、それはハンガリー側から求められたものですらあった。
ハプスブルク家支配からの独立を求めたハンガリーは、かつて
その運動をロシアによって潰されている。
そのため、日露戦争で日本がロシアを破った時、ハンガリー
お祭り騒ぎだったそうである。
教科書でならわない歴史というのは、本当にたくさんあるなぁ。