好きなシーン

たくさんの映画の中に、いくつかのお気に入りシーンがある。
まずは『ショーシャンクの空に』。
主人公が同僚(一緒に服役する連中を、彼はそう呼んだ)に
ビールをふるまうシーンが好きだった。
看守を助けた見返りにビールをおごらせるのだが、主人公自身は
それを飲まない。
その粋な計らいにグッときた。
サイダーハウス・ルール』のラストシーンも良かった。
ネタばれになってしまうので詳細は書かないが、思い出すだけで
頬がゆるむ。
映画の終わり方としては、わたしの中ではベストと言える。
さらに取って置きのお気に入りは、『家族の肖像』の会話シーン
である。
パンフレットに掲載されたシナリオからの抜粋。

教授「人々に囲まれて暮らしていると彼らのすることより、
   彼ら自身のことを考えねばならなくなる。
   他人のために悩み、他人ごとに巻き込まれていく。
   それにだれかが言ったように……烏は群れて飛び……
   鷲は一羽舞い上がる……」
ステファノ「烏ども、さ、飛ぼうぜ」
リエッタ 「じゃ、お夕食の時ね、先生」
一同ざわざわと立ち去り際、コンラッドが初めて口を切る。
コンラッド「しかし聖書に曰く、孤独は災いなるかな、
      堕ちれども助くる者なし」
ビアンカ 「コンラッド、聖書?!」
婦人の笑い声をあとに一同消える。

隠遁することの切ない言い訳と皮肉、その皮肉をうけた自嘲、
皮肉を打ち消す警句、その警句に対する嘲笑。
どれもが密接にからみあい、お互いを補完しあう。
ここまでのやりとりはちょっとない。