好きなシーン
たくさんの映画の中に、いくつかのお気に入りシーンがある。
まずは『ショーシャンクの空に』。
主人公が同僚(一緒に服役する連中を、彼はそう呼んだ)に
ビールをふるまうシーンが好きだった。
看守を助けた見返りにビールをおごらせるのだが、主人公自身は
それを飲まない。
その粋な計らいにグッときた。
『サイダーハウス・ルール』のラストシーンも良かった。
ネタばれになってしまうので詳細は書かないが、思い出すだけで
頬がゆるむ。
映画の終わり方としては、わたしの中ではベストと言える。
さらに取って置きのお気に入りは、『家族の肖像』の会話シーン
である。
パンフレットに掲載されたシナリオからの抜粋。
▽
教授「人々に囲まれて暮らしていると彼らのすることより、
彼ら自身のことを考えねばならなくなる。
他人のために悩み、他人ごとに巻き込まれていく。
それにだれかが言ったように……烏は群れて飛び……
鷲は一羽舞い上がる……」
ステファノ「烏ども、さ、飛ぼうぜ」
リエッタ 「じゃ、お夕食の時ね、先生」
一同ざわざわと立ち去り際、コンラッドが初めて口を切る。
コンラッド「しかし聖書に曰く、孤独は災いなるかな、
堕ちれども助くる者なし」
ビアンカ 「コンラッド、聖書?!」
婦人の笑い声をあとに一同消える。
△
隠遁することの切ない言い訳と皮肉、その皮肉をうけた自嘲、
皮肉を打ち消す警句、その警句に対する嘲笑。
どれもが密接にからみあい、お互いを補完しあう。
ここまでのやりとりはちょっとない。