絶対色空間と普遍言語

『カラーマネージメントの本』読了。
これは仕事絡みの本である。
モニタとプリンタ、さらには印刷物までのカラー・マッチングをどんな風に
行っていくかという内容。
専門的なポイントがわかりやすくまとめてある、大変良い本だった。
ところで、光や色に関する世界的な規定を作っているのは、国際照明委員会
という団体である。
正式名称はフランス語で「Commission Internationale de l'Elairage」
略してCIE。
本部はウィーンにあるという、極めてヨーロッパチックな組織である。
そもそも、スペクトルを発見したニュートンからRGBの三原色を理論的に
導き出したトーマス・ヤングまで、色の科学的分析はロンドン王立協会が
長らく牽引していた。
で、「ロンドン王立協会」と言われて思い浮かぶのはジョン・ウィルキンズ
司教の普遍言語である。
「ヨーロッパに戦乱が絶えないのは、話す言葉が違うからだ」という理念の
もと、特定の国語に依存しない絶対的な言語を作ろうとした。
エスペラント語などは、その正しき末裔と言える。
で、このカラーマネージメントというのが、いかにもそれっぽいのである。
たとえば以前のカラーマッチングは、まずはモニタとプリンタの色をあわせ、
そのプリントアウトに近づけて色校正を刷ってもらっていた。
つまり、漸次的に色をあわせていたわけである。
それに対して、昨今流行りのカラーマネージメント・システムは、まずは
理論的な絶対的色空間を想定し、それを介して各デバイスを調整していく。
つまり、大変「普遍言語」っぽいのである。
発想そのものがいかにもヨーロッパ的だなぁ〜、と。
色規定の世界にすら、いろいろと政治的な駆け引きがあるらしいのだが、
そんな話はいずれまた。