美学とローン

ポケモンについて書いた日記に、「自分が傷つかないように他者を使役する」
うんぬんというコメントをもらった。
で、はたと膝を打ったのは、それってサブライム美学にも通じる話じゃないか
ってこと。
サブプライムではなく、サブライム
まぎらわしい単語だが、両者の意識は奇妙に通底していたりもする。
そんなことを書いてみたい。
サブライム(崇高)美学というのは、18世紀の美学者エドマンド・バーク
指摘した、「われわれが恐ろしいものと危険なく通じている時ほどにはっきり
と感じられ、また強力に作用する」感性である。
つまり、対岸の火事は激しければ激しいほど魅力的だという話。
共感をともなわない視覚の冒険は、いとも簡単に暴走する。
一方、サブプライム・ローンの方は、プライム(優良顧客)から一段下がる
ということで、サブの接頭語を冠した。
数年前から議論かまびすしいが、アメリカで低所得者向けに設定された住宅
ローンである。
しかし、実はそこにも「対岸の火事」的心理が働いていたとは、言えない
だろうか。
返せるはずのないローンを組ませることができたのは、相手がその後どう
なろうが「知ったこっちゃない」という感性だったはずである。
深刻で面倒な状況に距離を置けば、「使役」の悪魔はすぐに顔を出す。
その距離こそ、われわれを守ると同時に閉じ込める、「近代」という時代の
大きな隔壁と言える。