ファッションには無頓着

『ちぐはぐな身体』読了。
この本は仙台の碩学・南くんからの推薦図書である。
われわれは、自分の身体に関して多くの部分を直接見ることができない。
鏡の助けを借りて何とか確認しつつも、四六時中そうしているわけには
いかず、自分の身体は自分にとって曖昧な対象として存在する。
「じぶんの感情の微細な揺れがそのまま出てしまうそのじぶんの顔を、
 ぼくらは、コントロール不可能なまま、それをそのままいつも他人に
 さらしている。物騒なことだ。」
と、そんなところから始まるファッション論である。
著者は京都大学・哲学科の博士過程を修了したが、ファッションについて
書き始めた時、恩師の一人に「世も末だな……」とつぶやかれたとか。
ファッションなど哲学の対象ではない、ということ。
アイボリックな逸話である。
ともあれ、
「男性の着ているもので女性が着てはいけないものはほとんどないという
 はなはだしいアンバランスが両性間にはある。そしてさらにその背後に
 あるのが、男性は見るひと、女性は見られるひとという、視線の政治
 とでもいうべき役割分担だ」
なんて書き方は、哲学畑の人ならではだと思う。
いろいろと刺激を受けながら読み進めることができた。
翻って自分自身のファッションと言えば、これは「無頓着」の一語に
つきる。妻が買ってくれたものを素直に着ているだけである。
ただ、この本を読むと、ヨウジヤマモトの服がちょっと着てみたくなる。