裏切る理由

数日前に書いた話の続き。
何故、70年代のマンガに組織を裏切るヒーローが多かったのか?
これには、いろいろな理由が考えられるが、たとえば「組織=会社」
と移しかえると分かりやすい。
「世界征服」というと話は剣呑だが、企業の目標は少しでもシェアを
伸ばすことである。だとすれば、その究極的な目標はシェア100%で
あり、つまるところ世界征服と言える。
○イクロソフトなんかを思い浮かべると分かりやすい。
70年代のテレビ番組を作った人たち(中でも中堅的な役割を担ったの)
は、60年代の学生運動をくぐった世代である。
反体制、脱権力の志を胸に秘めた彼らは、組織を超える自由への夢を
組織の中で育んだ。
そうして生み出されたのが、70年代・テレビマンガのヒーローだった。
ただし、組織自体がなければ、反組織の気骨も意味がない。
彼らの持つアンビバレンツな魅力とは、体制と反体制の葛藤だった
のだとも言える。
一方、さらに根深い理由も考えられる。
モダン(近代主義)のエネルギーは先行する時代に対する否定である。
ブレードランナー』のデザイナー、シド・ミード
「未来を思い浮かべるためには、現在に失望しなければならない」
と言った。慧眼である。
つまり、自分が生きた時代を否定してこそ、未来を手にできるという
ロジック。
それが、自分の能力の母体となった組織を離れ、あまつさえそれと
戦うことの正当性と言える。
日本は大平洋戦争に破れ、それまでの価値観や精神を否定されるべき
ものとして再設定した。
戦争の記憶がかすかに残る70年代は、そのロジックが花開いた最後の
季節だったのかも知れない。
1972年に来日したロラン・バルトは、日本を「すこぶるモダンな国」
と評した。
その点に関して言えば、日本は西欧以上に西欧的なのである。
不思議な国だと思う。