色彩嫌悪と白と赤

『クロモフォビア』読了。
戸田ツトムさんの装幀が美しい本である。
クロモフォビアとは、色を嫌う感性のこと。
全体的には夢想的なエッセイという感じだが、ところどころにドキッと
する記述が出てくる。
曰く
「色彩嫌悪は、色彩愛好の弱められた形態にすぎない」
「黒と白に固着することの多いコンセプチュアル・アート
「言葉を通じて何かを説明する試みはすべて、ある意味では、人差し
 指に収斂するという議論もある」
などなど。
反面、ヨーロッパ的な理性の偏重が白を呼びよせ、女性や東洋を色彩に
重ねて排除してきたのだと指摘されると、このブログの始まりで呑気に
「白が好き」などと言っていたのが少々恥ずかしくなる。
ちなみに、日本語の「白」は歴史の過程で「赤」といれかわったという
話を聞いたことがある。
もともとは「あかるい(赤い)」「くらい(黒い)」だったとか。
一方、「白」は「しるす」で印をつけること。
白が赤になり、赤が白になったのだ、と。
してみると、紅白というのは、もともとある種の交換性を持っていた
とも言えるわけで、その両犠牲はわたし好みである。