二人の母

昨日に引き続きDVD鑑賞。『眉山』を見る。
これは丸田さんのお薦めだったろうか。暖かい映画である。
不勉強極まりないので、眉山という山が徳島市のシンボル的な存在
だと知らなかった。どこから見ても「眉」の形に見えることから
その名があるという。なだらかで優しい姿の山である。
主人公の母は、その眉山を一緒になれなかった恋人(主人公の父親)
に重ねて思うことで、毅然として生きてきた。その母に反発しつつも
感謝と愛情を少しづつ吐露していく娘。そんな二人の物語である。
娘を松嶋菜々子、その母を宮本信子が演じて、それぞれに魅力的。
涙腺のゆるむ映画だった。
ところで、三日ほど前に福岡の小1殺害事件について触れた。
母親がほんの少し目を離したすきに子供を殺されたと報道されており
その無念を思って心が痛んだ。過失とも呼べぬ過失の罰にしては、
わが子の死はあまりにも重過ぎると感じた。
一方、そんな惨いことのできる「犯人の心の闇は想像できる範囲には
ない」とも書いた。
が、本日のニュースによれば、犯人は他ならぬ通報をした母親だった
という。それではまるで『ノーカントリー』ではないか…。
トミー・リー・ジョーンズ演じる保安官は、理解のできない犯罪が
増えてしまったこの世界に対して、存在の違和感を感じる。
わたし自身は原題『NO COUNTRY FOR OLD MEN(それは老いたる者
たちの国ではない)』を、そんなふうに、時代がゆがんでいく残酷さ
として理解した。わたしも徐々にその域に入りつつあるが、老いたる
者は、モラルの崩壊に歩調をあわせられない。その意味では、日本も
また『ノーカントリー』と言わざるを得なくなっているのだろう。
図ったわけでもなく、ここ何日かのことが奇妙に反響しあった。
だからと言って、出口が見えるわけでもないのだが…。