NO MUSIC

DVDを借りてきて、コーエン兄弟の『ノーカントリー』を見る。
本当は、先日仲山くんに薦められた『ダークナイト』か『河童のクゥと夏休み』が
見たかったのだが、前者はまだDVDになっておらず(当たり前か)、後者もまだ
一泊二日の最新作扱いだったので、やむなくスルー。
ともあれ、『ノーカントリー』もとてもおもしろかった。
奥深い意味については、町山智浩さんが博識な解説をされており、わたしなんぞが
とやかく言えるレベルではない。なので、内容については一旦置きまっしょい。
で、わたしがこの作品を気にいったのは、本編に全く音楽がかからないこと。
有名なポイントなのかも知れないが、最近はほとんど前知識なしに映画を見るため
その演出には見ていて気がついた。
緊張感を高めたり、スピード感を煽ったりするシーンでも、まるで音楽が入って
こないのである。
そして、「ないことに気づく」というのは、それ自体として知的な経験になる。
『バスカヴィル家の犬』が、何故吠えなかったのか? という具合い。
しかし、『ノーカントリー』はフィクションであって、ドキュメンタリーではない。
ドキュメンタリーであれば、さまざまなノイズが入ってくるところ、それもない。
映像体験としては、何だか変な感じなのである。
そして、それが嫌かというと、そんなことはなく、普通に(いや、普通以上に)
ドキドキするし、何だか半日常のようなとりとめのなさが気持ち良い。
そして、話の方も「普通ならここで終わるでしょ」といったところで終わらない。
その点もまた、とりとめのない感じ。
「あぁ〜、何かこの映画のテンポって気持ちいいなぁ〜。まだ、しばらく浸って
 いたいなぁ〜」
と思った刹那、ブツッと終わった。ハハハ。
NO MUSIC,NO LIFE?
原題は『NO COUNTRY FOR OLD MEN(それは老いたる者たちの国ではない)』
であり、確かにこの映画には「死」があふれている。
ちなみに、15歳未満貸出禁止で、けっこう刺激の強いシーンがあります。
未見の方はご注意を。