「成功」という病気

実を言うと、イチローがちょっと苦手だったりする。
才能も努力も素晴らしいと思うし、ベーシックな物言いは嫌いではない。
言葉を確かめながら冷静に話す時には、素直に「カッコイイ」と思う。
が、時折「何もそんな言い方をしなくても…」という発言が飛び出して、
それまで貯まっていた憧憬を見事にひっくり返される。
先日のインタビューも。
「1番になりたかったですね。僕はナンバーワンになりたい。
 オンリーワンになりたいとか甘いこと言ってるヤツが大嫌いなんで」
ってのは、ちょっとなぁ…。
言いたいことは分かる。
誰もが存在しているだけでオンリーワンなのだから、そのロジックに
甘えて努力を放棄するのは、確かに醜悪である。
しかし、すべての人が強くなれるわけではないし、争うことが好きな
わけでもない。
格好悪くたって、なれ合った方がいい場合もある。
イチローくらい高みにあるのならば、何も上から石を投げ落とすような
物言いをしなくてもいいのになぁ、と。
ちょっと大げさに言うと、その姿は弱い国を挑発して戦争を重ねてきた
アメリカという国の政治戦略と奇妙にダブるのである。
誰もがバカみたいな贅沢や勝利に酔いたいわけではない。
アメリカン・ドリームっていうのは、「成功にとりつかれる」病気なの
ではないだろうか。